ファインブランキング(FB加工)は“精密せん断加工”の一種である
ファインブランキング(FB加工)とはなにか?
ブランキング(打ち抜き加工)を精密に行うプレス加工技術のことです。この原理は金属に圧力を加えると塑性変形の力が高まるという「静水圧効果」に基づいています。一般的なプレス加工では、ダイ(型)の上に加工物を置き、パンチで加圧して打ち抜きますが、その際にダイとパンチの間に適正な隙間(クリアランス)が必要となります。これに対して、ファインブランキングはクリアランスを極力なくした上で、上下両方向から加圧しながら加工する方法です。せん断面の仕上がりは勿論のこと、平面度・直角度に優れた製品を加工する事が可能な工法です。
加工方法による精度・仕上がりの違いについて
一般的なプレス加工、弊社の精密せん断加工、ファインブランキング(FB)による、加工方法による違いを一覧表にしてみました。製品仕様・精度に合わせて要求されるコストにより望ましい加工方法を選択することになります。
加工方法による違いを解説
1.一般的な打ち抜きプレス加工
金型の構造上、材料に反りが生じた状態で打ち抜くため、製品の平面度を悪くしてしまったり、切断面の直角度に悪影響が出ます。クリアランスの調整により、ある程度は破断面・バリの抑制は可能ですが、ゼロにすることはできません。加工する板厚が厚くなるほど、破断面の面積が大きくなるため切断面の形状に凹みが生じてしまいます。
オーバースペックとならぬよう、単純な形状で精度が必要でない製品の場合は、金型イニシャルを抑えることができますが、一般的な打ち抜きプレスで、せん断面が必要な部品を加工することは困難と言えます。ギヤ形状やカム機能部品を加工するには、ファインブランキングや精密せん断加工をチョイスすることで実現可能となります。
2.ファインブランキング(FB加工)
ファインブランキングは、特殊なプレス機を用いて、「打ち抜き力」と「材料を押さえる力」、「材料を裏側から押さえる力」をそれぞれ制御しながら、高精度なプレス加工ができる工法です。
静水圧効果という、加圧により塑性変形が高まる性質を利用して、平滑なせん断面を実現しています。優れた平面度・直角度を得ることができる工法ですが、汎用プレス機では加工できず“複動油圧装置”を配置した専用機が必要です。専用機は大変高価であり、精密せん断加工の金型イニシャルと比較してコストが高くなってしまう事があります。
ファインブランキング(FB加工)は、自動車部品を中心として高品質な精密部品の製造に用いられている加工法であり、下記にファインブランキング加工の優れた点を紹介します。
高精度なプレス加工が可能
ファインブランキングの断面は、ミクロン単位の精密なプレス加工が可能です。精密な断面積の理由は、金属に圧力を加えると塑性変形の力が高まるという「静水圧効果」に基づいています。静水圧効果によって金属の塑性が高くなることにより、バリ・ダレの少ない断面成形となります。
通常では加工困難な材料もプレス加工できる
汎用プレス機によるせん断加工では、硬度の高いステンレス材は加工困難と言えます。ファインブランキングでは特殊鋼をはじめ、ステンレス鋼、超合金といった難加工材にも対応可能というメリットがあります。
高精度の加工により工程の合理化ができる
加工精度が高いことから、2次切削などの仕上げを必要としないため、工程を合理化することができます。製品の生涯コストを抑えることに繋がり、トータルコストの削減が可能です。
3.汎用プレスでの精密せん断加工(シェービング&抜き戻し)
シェービング加工は、普通せん断で生じた破断面の部分を削ぎ取って、良好な切断面を得る方法です。
板が厚くなるとクリアランスも大きくなるため、1回のシェービング加工では良好なせん断面が得られず、シェービング加工を複数回おこなう場合もあります。このような僅かな“削ぎ取り良”を実現するため、クリアランスはできる限り小さくすることが求められます。
弊社の“精密せん断加工”は、シェービング+抜き戻しの技術を応用して加工しています。
シェービング加工のみでは、良好な平面度を維持することが難しいのですが、スプリング(ばね)を用いて圧力調整をする“ブッシュバック”と呼ばれる機構を用いて平面度を保つことを可能にしています。汎用プレス機での加工が可能であり、一般プレス用の金型と比較すると、精密せん断の金型イニシャルは高くなりますが、ファインブランキングとの比較ではイニシャルを抑制することができます。
しかしながら、技術的に細かな屑が発生し易い特徴があり、キズやダコンなどが生じやすい弊害がございます。金型の管理・クリアランス調整には大変手間がかかることも追記しておきます。
せん断100%を求める場合には、金型調整に時間もかかり不良率も高くなってしまいます。製品へ有害なバリが残る場合もあるため、せん断面の最後を意図的に破断状態にすることで、バリの発生を抑制することを狙っています。
弊社の“精密せん断加工”は、実力値として“せん断面90%程度”が可能ではありますが、効率を考えたモノづくりの観点から、せん断面70%~80%程度を保証・推奨しております。
イニシャル面では、“精密せん断加工”にメリットがあると言えますが、下記にファインブランキングの優れた点との違いを紹介します。
ファインブランキングには劣るが高精度なプレス加工が可能
精密せん断加工ではFB加工と比較した場合、ミクロン単位が可能とは言えませんが、100分台の精度で加工可能です。ダレについては、シェービング加工により抑制することができ、弊社の精密せん断加工の優れた点と言えます。
SUS材などは加工困難である
弊社の“精密せん断加工”は鉄系材料を得意としており、硬度の高いステンレス材などは加工困難と言えます。表面を削ぎ取る際に破断となりやすく、金型刃物の摩耗・欠損し易いなどネックとなります。
冷間鍛造技術との併用で合理化の提案
弊社の“精密せん断加工”は、冷間鍛造技術との併用が可能であり、一般的なプレス部品では困難な形状も加工する事が可能です。2次切削や仕上げなど工程削減の合理化を検討させていただきます。
“精密せん断加工”に関する技術提案事例
ファインブランキングから一般プレス加工への工法転換で40%コストダウン
Before 品質を維持しながら、コスト削減を実現したい
こちらの事例における製品について、従来はファインブランキング加工にて生産しておりました。 お客様(産業機器関連)の業界では、競争力向上に向けてコストダウンが強く求められており、ファインブランキング工法を維持したままでは、コスト削減に限界を感じておりました。 製品加工は外注依頼しているため仕入れ価格を抑えたいというご要望から、ファインブランキング製品と同等の品質を維持し、プレスで加工できないかというご相談を受けました。
After 一般プレスへの工法転換により40%のコストダウン
ファインブランキングで制作していた工法から、冷間鍛造と精密せん断加工のプレス技術を併用する工法転換を提案しました。 板厚公差(±0.03)の課題は冷間鍛造による厚み矯正で解決し、当社の精密せん断技術により側面せん断を仕上げることで2つの課題をクリアしました。 ファインブランキング製品と比較して、弊社加工品のダレが小さいことが写真からもお分かり頂けると思います。こちらの事例では、ファインブランキングの一般プレス加工化により、40%コストダウンを実現しました。
ファインブランキングから一般プレス加工への工法転換で30%コストダウン
当社の精密せん断加工事例
精密せん断加工のことなら、工法転換プレス加工技術.comまで!
いかがでしたでしょうか。今回は精密せん断加工についてご紹介しました。
工法転換プレス加工技術.comを運営する熊谷精機株式会社は、プレス加工のプロフェッショナルとして、主に自動車、産業機械に向けてあらゆる部品を製作してまいりました。
当社は、様々な工法転換のご提案実績がございます。切削部品のプレス化や複数部品の一体化、FB(ファインブランキング)製品の一般プレス加工化など、当社がこれまで培ってきた精密せん断加工技術、冷間鍛造加工技術を用いて、お客様のご要望の製品を製作いたします。
さらに、当社では月産100〜100万個以上まで様々な数量に対応することができます。工法転換を検討する際は、ご要望に応じて生産性検証を行い、あらゆる課題を抽出した上で合理化提案をいたします。
プレス加工に関するお悩みをお持ちの方は、工法転換プレス加工技術.comまでお問い合わせください!