ハイテン材のメリットとプレス加工における課題を解説

近年、自動車などの軽量化ニーズから、ハイテン材の需要が増してきています。一般材と比較してハイテン材は強度を維持したまま軽量化が可能である一方、その強度から成形荷重が高くなってしまい加工が難しいと言われております。

こちらのコラムでは、ハイテン材とは、どのような材質なのか、メリット、デメリットとともに、詳しくお伝えしています。

ハイテン材とは

ハイテン材とは“High Tensile Strength Steel”を略した名称であり、高張力鋼鈑と呼ばれます。『軽くて丈夫』というのがハイテン材の特徴です。

国やメーカーによって基準は微妙に異なり、一般的には340MPa~790MPaのものがハイテン材(高張力鋼板)に分類されています。180MPa以上あればハイテン材と呼んでいる国もあるようです。

また、引っ張り強度が980MPa以上のハイテン材は、超高張力鋼板“スーパーハイテン”と呼ばれています。

軽量化を実現する材質に、鉄より強くアルミより軽い”カーボン”がありますが、カーボンはハイテン材よりコストが高いため、軽量化とコストのバランスを兼ね備えた”ハイテン材”の需要が増しているのです。

ハイテン材を利用するメリット

従来の鋼材と比較して、ハイテン材は以下の5点が優れていると言われています。

  • 機械的性質   通常の鋼材と比べ降伏点が高く、引っ張り強度が高い。
  • 耐摩耗性・対候性  耐久年限は長く、熱を加えても硬化が少ないため劣化し難い。
  • 加工性  穴あけ、曲げ、切削などの機械加工性に優れ、冷間でも加工可能。
  • 溶接性  従来の鋼材に比べ炭素含有量が低いため、溶接性に優れている。
  • 経済性  非調質鋼のため、コストをかけず製造ができ、その強度から使用素材量を少なくできる

非調質鋼とは?
焼入れや焼戻しなどの調質熱処理を省き、鍛造して空冷、または圧延して空冷したままでも高い機械的性質をもつ鋼材のこと。

製品の軽量化が可能

ハイテン材は、自動車業界での需要が伸びている材質です。硬い鋼材のため、同じ強度を保った上で鋼材を薄肉化することができ、自動車などに適用すると重量を軽くすることが可能です。自動車業界においては燃費向上にむけた”車体の軽量化”が至上の課題となっており、ハイテン材の大きなメリットとなっています。

ハイテン材加工の課題

ハイテン材は上で述べた通り、自動車の軽量化に繋がるメリットがある一方で、難加工材であるため加工を行なう際には注意が必要です。

成形加工の難しさ

ハイテン材はその強度の高さから、素材に力を加えた際に壊れないまま連続的に変形し、元の形状を保とうとする性質があります。形状によってはプレス成形中に”割れ”や”クラック”などが生じる可能性がある難成形材料です。

金型耐久性と維持管理

ハイテン材はプレスする金型自体に強度が求められるため、金型材質の高硬度化は必須となります。さらに、ハイテン材の製品をプレスで量産し続ける場合には、金型・刃物の維持管理が重要であり、メンテナンスのタイミングなど、金型要因で不具合を生じさせない保全をおこなう必要があります。

ハイテン材のピックアップ加工事例

当社のハイテン材ピックアップ加工事例を下記にてご紹介します。是非、ご確認ください。

産業機器駆動部用シムリング(ファインブランキングからの工法転換)

こちらは、産業機械の駆動部品に使用されるシムリングです。材質はハイテン材(SPH440)、板厚は2.8tで、順送プレス加工にて加工しております。

こちらのリングは、2.8㎜±0.03という厚みに仕上げる必要があり、外周せん断は70%以上必要な高精度リングでした。材料の板厚変動により製品厚みがバラついてしまうという課題がありましたが、生産途中で厚みチェックを頻回に行うことで品質を確保し、現在まで問題なく生産しております。

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ギヤ歯冷間鍛造複合機能部品

こちらは、スライドドアクローザー用のレバーギヤです。材質はハイテン材(SPH590)、板厚は2.6tで、順送プレス加工にて生産しております。

製品を加工するにあたり、せん断量の確保やツブシ形状の成形ができるかが課題でした。当社では、いままでに培ってきた冷間鍛造と精密せん断のノウハウを生かし、2つの技術を複合加工できる順送金型を設計し、無事に量産ラインの立ち上げにつなげることができました。

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ハイテン780製 精密せん断ギヤ(ギヤ歯高張力鋼鈑熱処理レス化部品)

ちらは、ドアウィンドウレギュレーターに用いられる精密ギヤです。材質はハイテン材(SPH780)、板厚は3.2tで、単発プレス加工にて生産しております。

こちらのギヤは、形状としてはインボリュート平歯車で、モジュール2.0です。お客様からは、従来の炭素鋼から780級ハイテンに変えることで熱処理を廃止し、コストダウンできないかとご相談をいただきました。そこで当社では、精密せん断加工の技術を応用し、ギヤ歯の仕上げ工程を複数回設定することで、量産化につなげることができました。

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ダレ無し精密せん断シート部品

ダレ無し精密せん断シート部品

こちらは、自動車用シート部品です。材質はハイテン材(SPH590)、板厚は2.6tで、順送プレス加工にて生産しております。

こちらのシート部品は、せん断70%以上でセンター孔両面にC0.5が必要な製品です。C面を加工したうえで、穴径公差0.05と平行度0.4以下が保証できるかどうかがポイントでした。

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ダレ無し精密せん断加工カム機能部品

ダレ無し精密せん断加工カム機能部品

こちらは、スライドドア用ラッチに使用されるカムです。材質はハイテン材(SAPH440)、板厚は3.2tで、順送プレス加工にて生産しております。

こちらのカムは、全周がせん断70%以上必要な部品で、売り型としてお客様の設備仕様に合わせた金型設計をする必要がありました。

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当社のハイテン材加工事例

ハイテン材のプレス加工のことなら、工法転換プレス加工技術.comまで!

いかがでしたでしょうか。今回はハイテン材の特徴についてご紹介しました。

工法転換プレス加工技術.comを運営する熊谷精機株式会社は、プレス加工のプロフェッショナルとして、主に自動車、産業機械に向けてあらゆる部品を製作してまいりました。

当社は、様々な工法転換のご提案実績がございます。切削部品のプレス化や複数部品の一体化、FB(ファインブランキング)製品の一般プレス加工化など、当社がこれまで培ってきた精密せん断加工技術、冷間鍛造加工技術を用いて、お客様のご要望の製品を製作いたします。

さらに、当社では月産100〜100万個以上まで様々な数量に対応することができます。工法転換を検討する際は、ご要望に応じて生産性検証を行い、あらゆる課題を抽出した上で合理化提案をいたします。

プレス加工に関するお悩みをお持ちの方は、工法転換プレス加工技術.comまでお問い合わせください!