精密せん断加工とは?精密せん断加工を実現する加工方法をご紹介!

せん断加工とは?

プレス加工に於いて、せん断加工とは、金属板の切断に用いられる加工法です。
穴あけ、打ち抜き、切り欠きなど、せん断加工には様々な種類がありますが、プレス加工は“せん断加工”の組み合わせにより成り立っているといえます。

せん断加工は、上下一対の金型を用いて、素材の金属板に圧力をかけることで切断する方法です。「ハサミで紙を切る」「パンチで穴をあける」原理を、金属の板に置き換えて想像して頂くと分かり易いかと思います。

切断面は「だれ」「せん断面」「破断面」「バリ」で構成されます。このうちの「だれ」「せん断面」「破断面」「バリ」は、プレス加工をおこなう上で、かならず発生してしまう加工産物です。

“せん断加工”と“精密せん断加工”の違いって何?

通常のせん断加工を“普通せん断加工”と呼びます。

“精密せん断加工”は、”普通せん断加工”での「ダレ」「破断面」「バリ」の部分を抑制し、普通せん断よりも良好な切断面を得ようとする加工方法のことを指します。

つまり、“普通せん断加工”と“精密せん断加工”の違いは切断面の仕上がりにあるといえます。切断面の違いは、下記の比較写真をご覧ください。

※普通せん断と精密せん断の断面比較

>>なぜ“綺麗なせん断面”が必要とされるのか?

>>せん断面の“面粗さ”に関するレポート

精密せん断加工を実現する方法

1.クリアランス“小”加工

クリアランス“小”加工は、抜きのクリアランスを「0(ゼロ)」に近づけて、きれいな切断面を得る加工法です。

この方法は、通常のせん断加工に比べると良好な切断面を得られますが、クリアランスをゼロに近づけることで、パンチとダイが干渉してしまう危険性もあるため注意が必要です。適正なクリアランスで加工を行うことにより、破断面(クラック)の傾き・バリを抑制することができ、せん断面を確保することができます。 1.0~2.0t程度の比較的薄い板厚であれば、クリアランスを詰めることで良好なせん断面を得ることが可能です。

            ※クリアランスの大小による影響

クリアランス“小”加工は、通常のせん断加工に比べて、せん断面の仕上がりが向上します。クリアランスを調整することで、ダレと破断面を抑制することが可能ですが、無くすことはできません。

2.ファインブランキング加工

金属材料には、高い静水圧(強い力で押さえる)をかけると、素材の延性が増大する性質があります。この現象を利用して“精密せん断加工”を行う加工方法がファインブランキングです。
ブランク抜きをしようとする外周には、V字形状を持った“板押さえ”を材料に食い込ませるようにして圧をかけ、ダイには“逆板押さえ”と呼ばれる製品の反りを防ぐ機構が入っており、打ち抜く際に強い力で材料を支えています。併せて抜きの“クリアランス”はやはり小さくする必要があります。
「材料を打ち抜く力」「材料を押さえる力」「下から反りを防ぐ力」、それぞれ個別に圧力調整可能な構造を持っている専用プレス機を必要としますが、通常のプレスでは得られない優れた切断面を実現することが可能です。

>>精密せん断加工、ファインブランキング(FB加工)との違いは?

ファインブランキング加工では、通常のせん断加工に比べて、せん断面の仕上がりは大幅に向上し、ダレも抑制されます。切断面の直角度、製品の平面度に優れた製品が加工できます。

3.シェービング加工

シェービング加工は、普通せん断された切断面を薄くそぎとり、良好な切断面を得る方法です。そぎとり量は材料板厚の3〜10%程度です。板が厚くなるとクリアランスが大きくなるため、1回のシェービング加工では良好な面が得られず、シェービング加工を複数回おこなう場合もあります。このような僅かな“そぎとり量”を実現するため、クリアランスはできる限り小さくすることが求められます。

シェービング加工では、通常のせん断加工に比べて、せん断面の仕上がりは大幅に向上します。せん断面と一緒に“ダレ”をそぎ落とすことから、結果としてダレの抑制・ダレ無しにすることも可能な技術です。 弊社の得意とする技術でもあります。

シェービング加工の難点としては、薄く細かいスクラップが排出されるため、その除去が難しいことにあります。スクラップの噛み込みにより“キズ”や“ダコン”の原因となってしまうことから、生産する上で大変手間のかかる管理が必要となります。

精密せん断加工に関する技術提案事例

ファインブランキングから一般プレス加工への工法転換で40%コストダウン

Before 品質を維持しながら、コスト削減を実現したい

こちらの事例における製品について、従来はファインブランキング加工にて生産しておりました。 お客様(産業機器関連)の業界では、競争力向上に向けてコストダウンが強く求められており、ファインブランキング工法を維持したままでは、コスト削減に限界を感じておりました。 製品加工は外注依頼しているため仕入れ価格を抑えたいというご要望から、ファインブランキング製品と同等の品質を維持し、プレスで加工できないかというご相談を受けました。

After 一般プレスへの工法転換により40%のコストダウン

ファインブランキングで制作していた工法から、冷間鍛造と精密せん断加工のプレス技術を併用する工法転換を提案しました。 板厚公差(±0.03)の課題は冷間鍛造による厚み矯正で解決し、当社の精密せん断技術により側面せん断を仕上げることで2つの課題をクリアしました。 ファインブランキング製品と比較して、弊社加工品のダレが小さいことが写真からもお分かり頂けると思います。こちらの事例では、ファインブランキングの一般プレス加工化により、40%コストダウンを実現しました。

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ファインブランキングから一般プレス加工への工法転換で30%コストダウン

Before ファインブランキングにより製作

こちらの事例における製品について、従来はファインブランキングで生産されていました。自動車用シートベルトの関連部品という事で、世界各地で生産されている製品でしたが、為替レートの変動により価格が大きく影響を受けてしまうことがあり、コストを抑制したいという課題がありました。そこでお客様より、コスト削減に向けて汎用プレス機での生産ができないかというご相談を受けました。

After 一般プレスへの工法転換で30%コスト削減

従来のファインブランキングから、冷間鍛造+精密せん断による一般プレス加工への工法転換を提案しました。こちらの製品では板厚を超えたボス形状(4.0mm材料に対し4.3mmの高さ)を実現する必要がありましたが、繰り返し試験加工を行うことで最適な加工条件を掴み、併せて刃先せん断量70%の課題もクリアすることができました。こちらの事例では、ファインブランキングと同等の精度を維持しながら、一般プレス加工へ工法転換することで、30%コストダウンを実現しました。

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当社の精密せん断技術を用いて製作したピックアップ加工事例

続いて、実際に前述の技術を用いて、製作した精密せん断加工事例をご紹介いたします。

ダレ無し精密平板

ダレ無し精密平板

こちらは、ステアリングコラムの長さ調整に用いられる精密平板です。材質はSPHC、板厚は6.0tで、順送プレス加工にて生産しております。

こちらの平板は、穴周辺と外径の突起部分で抜きダレを抑え、平面度の確保ができるかが製造における課題でした。当社では、精密せん断加工の技術を応用することで量産化することに成功しました。

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ダレ無し精密せん断シート部品

ダレ無し精密せん断シート部品

こちらは、自動車用シート部品です。材質はハイテン材(SPH590)、板厚は2.6tで、順送プレス加工にて生産しております。

こちらのシート部品は、せん断70%以上でセンター孔両面にC0.5が必要な製品です。C面を加工したうえで、穴径公差0.05と平行度0.4以下が保証できるかどうかがポイントでした。

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ダレ無し精密せん断加工カム機能部品

ダレ無し精密せん断加工カム機能部品

こちらは、スライドドア用ラッチに使用されるカムです。材質はハイテン材(SAPH440)、板厚は3.2tで、順送プレス加工にて生産しております。

こちらのカムは、全周がせん断70%以上必要な部品で、売り型としてお客様の設備仕様に合わせた金型設計をする必要がありました。

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ダレ無し両面穴+C面皿加工部品

ダレ無し両面穴+C面皿加工部品

こちらは、自動車で使用されるステアリングコラムの角度調整用部品です。材質はSPHC、板厚は6.0tで、順送プレス加工にて生産しております。

こちらの部品は、両端の円形部分の抜きダレを極小で抑えて、0.15の平面度を確保する必要があり、また穴部分にC面加工をする必要がありました。

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真鍮製 ダレ無し楕円リング形状部品

真鍮製 ダレ無し楕円リング形状部品

こちらは、自動車で使用されるダレ無し楕円形状プレス部品です。材質は真鍮(C2801)、板厚は5.0tで、単発プレスにて加工を行っております。

形状としては、内径と外径の差が2mmと薄く、ダレのない加工が施されていることが特徴です。こちらの製品は機械加工での製作を予定していたところ、プレス加工への工法転換ができないかということで、ご相談をいただきました。

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当社の精密せん断加工事例

精密せん断加工のことなら、工法転換プレス加工技術.comまで!

いかがでしたでしょうか。今回は精密せん断加工についてご紹介しました。

工法転換プレス加工技術.comを運営する熊谷精機株式会社は、プレス加工のプロフェッショナルとして、主に自動車、産業機械に向けてあらゆる部品を製作してまいりました。

当社は、様々な工法転換のご提案実績がございます。切削部品のプレス化や複数部品の一体化、FB(ファインブランキング)製品の一般プレス加工化など、当社がこれまで培ってきた精密せん断加工技術、冷間鍛造加工技術を用いて、お客様のご要望の製品を製作いたします。

さらに、当社では月産100〜100万個以上まで様々な数量に対応することができます。工法転換を検討する際は、ご要望に応じて生産性検証を行い、あらゆる課題を抽出した上で合理化提案をいたします。

プレス加工に関するお悩みをお持ちの方は、工法転換プレス加工技術.comまでお問い合わせください!